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研究内容

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(1) 酸化ストレス:アルデヒド化合物による生体成分の修飾と付加体の生成
(2) 食の機能性:植物性食品成分の生体調節機能

【研究概要】
私たちの体は常に何らかの危険因子に曝されている。それらの中には、細菌やウィルスなどの外因性因子や、親電子性物質により化学修飾を受けたタンパク質、核酸、さらには死(アポトーシス)細胞などの内因性分子群(ダメージ関連分子パターンと呼ばれる)が含まれる。当研究室では、酸化ストレス・炎症などに伴い“健康が損なわれるメカニズム”に関わる修飾タンパク質などの構造解析、さらにはこうした危険因子に対する生体応答の仕組みに関する研究を展開している。一方、“食の機能性”の解明を目指し、健康を守る食品の機能性の開拓に関する基礎研究を進めている。以下、最近の研究の進展を含めて概説する。

(1) 酸化ストレス:アルデヒド化合物による生体成分の修飾と付加体の生成
酸化ストレスは、癌、糖尿病合併症、高血圧(動脈硬化)などの生活習慣病全般に関わっているものと考えられている。当研究室では、20年以上にわたり、脂質や糖質を起源として生成されるアルデヒド化合物によるタンパク質などの生体成分の化学修飾に関する研究を進めてきており、アルデヒド付加体の構造解析を通じて、タンパク質の変性修飾機構に関し大きな貢献を果たしてきた。また、マススペクトロメトリーを用いたアルデヒド付加体の高感度定量のほか、修飾タンパク質を分子プローブとした特異的モノクローナル抗体の作製から病態解析に関する一連の研究を進めてきた。特に、免疫化学的解析研究を志向したことにより、基礎および臨床医学研究への貢献が可能となり、これまでに酸化ストレスに関連した様々な疾患への応用に成功している。

 

(2) 食の力:植物性食品成分の生体調節機能

植物は機能性食品成分の宝庫であり、これまでにも老化や疾病に対する予防効果のある様々な成分が取り上げられてきている。機能性が報告されている植物性食品成分の多くが親電子性という化学的性質をもっている。最近のレドックスバイオロジー研究の進展により、この性質と生体防御機能との関連性が明らかになってきた。例えば、アブラナ科植物に広く含まれるイソチオシアネート化合物は、チオール (SH) 基に対して選択的に作用することが知られる親電子化合物であるが、中でもスルフォラファンはブロッコリーに含まれる解毒酵素誘導物質として報告されて以来、食品に含まれる最も有名ながん予防成分の一つとなっている。また、新芽(スプラウト)を使った商品戦略により、裾野が広がり、スルフォラファンの名前は今や一般家庭にまで浸透している。当研究分野でも、ワサビに含まれるイソチオシアネートを中心に、解毒応答、神経細胞分化誘導、熱ショック応答などに関する成果を報告してきた。一方、こうした親電子性食品成分が細胞に作用した場合、それらを感知する分子はチオール基をもつタンパク質やグルタチオンなどであることが容易に推測できる。こうした食品成分の機能性を理解するうえでも、味覚や嗅覚などと同様、感知機構に関する情報が必要不可欠であり、必然的にセンサー分子の同定やシグナル伝達機構の解明にまで踏み込んだ研究へと進むことになる。機能性食品研究では、アッセイ系導入と成分探索をセットにして一つ一つ知見を積み重ねるアプローチが最も一般的である。それに加えて、機能性発現機構解析へのアプローチも比較的容易になってきた。こうした状況を踏まえ、現在、当研究室では、受容体などのタンパク質との相互作用を介した食品成分の機能性発現などのプロジェクトを通じて、食の力の解明を目指した機能性食品研究を展開している。

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